日本キリスト教会 房総君津教会@ 本文へジャンプ
 パイプオルガン

1.設置までの経緯

 房総君津教会は2010年1月の定期総会において、パイプオルガンの設置検討を決議し、その後2年ほどの歳月を掛け、他教会のオルガンの見学から始まり、オルガンの規模、予算、製作者などの選定にあたり、2011年12月の臨時総会でマルク・ガルニエ・オルグ・ジャポン社に製作依頼することを決議しました。2013年7月のオルガン完成には、エリザベート・ガルニエ・バラコヴァ様と水野真理子様による奉献演奏会も執り行われました。今後の房総君津教会の伝道において、パイプオルガンの設置により礼拝での讃美が豊かになり、キリスト教信仰を次の世代に受け継ぐための器として用いられていくことを願ってやみません。


2.会衆讃美のためのオルガン

 パイプオルガンというと、2段以上の鍵盤があり、足鍵盤(ペダル)がある大きなものを思い浮かべると思います。ところがヨーロッパの大聖堂のパイプオルガンには、メインとなる大オルガン(Grossorgel)の他に、小オルガン(Chororgel)があります。今回は50名程度の会堂の大きさや、礼拝での使用を中心に考えて、小オルガンの規模で製作されています。

 マルク・ガルニエ・オルグ社は、フランスのアルザス地方南部のスイス国境近くに拠点を置くオルガン工房で、ドイツ~フランスのバロック様式のオルガンに精通した伝統的技法を用いることで知られています。1976年にストラスブールの聖パウロ教会で、著名なオルガニストのフォーゲル、クラース・ボルト、レオンハルトらと協力して築造された17世紀北ヨーロッパスタイルのオルガンによって有名になりました。日本では1980年代から神戸松蔭女子学院をはじめ、大学の講堂、コンサートホールにある大規模なオルガンで知られていますが、地元のアルザス地方では小さな礼拝堂のためのオルガンも少なからず製作しています。日本キリスト教会神学校(埼玉県川越市)の礼拝堂にも2001年にガルニエ社のオルガンが設置されています。



 製作:
  マルク・ガルニエ・オルグ・ジャポン社

 1段鍵盤(C-d''':51鍵盤)
 4ストップ(パイプ数192本)
  Portunal 8' (metal, c-d''')
  Gedackt 8' 
(metal,C-d''')
  Flötenprincipal 4'
(metal,C-d''')
  Waldflöte 2
' (metal,C-d''')

3.房総君津教会のオルガンについての技術説明 (ボリス・ガルニエ記)

 この楽器は4つの金属製のフルー管を備えています。(錫と鉛の合金)
 オルガンの製作にあたっては、以下の3点の基準をパイプ整音の目標として、最大限に礼拝堂に合った楽器を提供できるよう音響に注意しながら作業を実施しました。
  1. パイプの整音は会衆讃美の伴奏を目的として実施しました。 それは会衆が讃美歌を歌うのをしっかりとリード、または伴奏できることを意味しています。
  2. また、私共は近隣に迷惑を与えないように音量に注意を払いました。
  3. それに加えて17、18世紀の音楽作品を演奏できるようにオルガンの音楽性も追求しました。 (できる限り楽器に合った作品を選択することが重要です。)
 4つのストップには、2つのグループを見ることができます。まず始めに ポルトナル 8’、そしてその他のストップの組合せとしてゲダクト 8’ + フレーテンプリンツイパル 4’ + ヴァルトフレーテ 2’です。

- ゲダクト 8’- (Gedackt 8')
 このストップのパイプは錫 / 鉛の合金の板を頑丈にするためにハンマーで叩いて造られています。パイプの上部はメタルの蓋を半田付けしてあります。それにより柔らかくて丸い音となります。このストップはオルガンの基本の音となり、空間を心地よく満たす役割があります。ゲダクト 8’ は礼拝で単独で使用することができ、他の独奏楽器や独唱の伴奏もできます。

- フレーテンプリンツィパル 4’- (Flötenprincipal 4')
 これはこのオルガンで最も重要なストップであり、他のストップとのバランスに結びついています。それは音色や音量のバランスを意味しています。18世紀のドイツの音楽では合唱の響きによく適合することが重要でした。 (合唱はほとんど子供の声と共に歌われていました。 ) このフレーテンプリンツィパルは特に 8’ + 4’( + 2’) の組合せにより会衆讃美の伴奏においてたいへん大きな役割を持っています。重要なことは和声を弾いた時に (例えば4声のコラールにおいて) 一番高い音がよく聞こえ会衆の歌をリードできることです。
 さらにこのストップは、ポリメロディーの能力を持ち合わせており、単独で3声のポリフォニーの曲を演奏することや、2段鍵盤でのオクターブのエコーのような効果を得ることも可能です !

- ヴァルトフレーテ 2’ - (Waldflöte 2')
 最後にヴァルトフレーテ2’ は « 小さなプレノー » を形成しますが、 きつくない音色で最終的な力を与えるものでなくてはなりません。主な役割は会衆の讃美歌の伴奏にあり、右手の一番上の音がよく聞こえ会衆の歌をリードできることです。このストップは単独では用いませんが、ゲダクト 8’またはポルトナル 8’との組合せにより、小さな手鍵盤曲の変奏やデュオなどで特色ある明るい音色を生み出します。

- ポルトナル 8’ - (Portunal 8')
 これはソロのストップとして考案され、礼拝では会衆讃美の伴奏用としてではなく、瞑想や静かな時に用います。 開管の « Flötedolce(フレーテ ドルチェ) » のような音色で、最初の1オクターブはゲダクト 8’と共有しています。 このストップは時によってはゲダクト 8’と一緒に使うこともできます。 この場合はポルトナル 8’の倍音により音量が増します。この組合せはやや « ロマンテイックな音色 » を生み出しますので、それに相応しい作品を選択できるでしょう。

 これらのストップのバランスは、残響がほとんどない小さな空間の音響を最大限に用いて、最高の音楽性を達成するために実施致しました。
[オルガン製作]
コンセプト   マルク ガルニエ
製作      イヴォ ガルニエ
         フランス工房スタッフ
整音・組立  ボリス ガルニエ
         マテュー ガルニエ
         中山 航介
         志賀 誠司


※奉献演奏会のプログラムはこちらです。